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いのっていたのだと僕は聞かされる。何も知らないかわいそうな大人たち。白い象徴は怠惰のあかしさ。自分を表現するのを怠けたんだ。
まもられていたのだと僕は聞かされる。自分を律することをやめて薬を覚えて。退廃で呼吸したらきっともうあの星へはいけない。帽子入れの中に見えない鳥がいて、僕はそれを逃がした。裏切られるのをおそれたんだ。
先生が額に掲げる古いレコードの中で自分と目が合ってほくそえんだ。鏡像は意地の悪い美少年の顔。風が吹き、カーテンがゆれる。白いペンキのはげた窓枠のむこうに、海のような青い森。ザワザワとさざなみがうたう。無力な先生は僕にふれたがって、錠剤をばらまく。リノリウムにぶちまけられたひとつひとつを拾い上げて、ビンに入れて、夜やってくる恋人のために。ひどい風が吹き荒れる。嵐になるなと先生が言うから、僕は歓喜する。
壊れた窓の鍵に誰も気づかない。
窓辺で歌をうたおう夜に啼く気味の悪い鳥のように。パジャマのボタンをはずしたら息ができない! 宇宙にいるみたいだね。
ベッドの上で跳ねる跳ねる跳ねる。蛇口をひねると赤い水が渦を巻く。もうどこへも行けない。もうどこへも行けない。
「ごめんね」謝ると君はすごく怒るから言えずにいる。
夜明けの薄闇のあいだ、僕は唯一すなおさを取り戻す。少年になれる。出会ったころ僕は君の包帯がほどかれるのが怖かった。だから夜な夜な指をねじ込んで傷口をえぐった。だけどねぇ僕のうつくしさを知っていたね。初めての人だった。
「ごめんね」唾液とともに何度だって飲み込んでいる。君はすごく狂っているようだけどじつは僕のことを信じきっている。
おかしいのは僕のほうだった。
だからねぇ僕は行けない。どこへも行けない。箱の中に閉じこもって毎日がそこなわれていくのをながめているしかない、色あせてゆく赤い花のような生活を。
さようなら。どうか先に行って、先生はきっと見抜いてる。僕の完成された仮面の下に息づく怪物を。奇怪な御祭りの列をきっとあの粗暴な手で打ち砕く。窓を開けて飛んでいって、どうか、僕が小さなころ殺した見えない鳥のかわりに。
あくる朝せんせいがぼくのほおを打った。もうひとりじめできるのにちがうちがうと怒るから、どうしていいかわからなくなった。僕はきれいなまま死んでいく人形みたいだ。
君はいまごろ海の上へ落ちただろうか。ひそやかに繰り返されるさざなみの音にいまだ変化はない。
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