×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
年増のおばさんたちにならわたし若いのよ、まだなんにも知らないのよ、って若さに対して鼻持ちならない態度でいられるけれど、先生の主な恋愛対象になるであろう年代のきれいで華やかでかわいいおねーさんたちのことを考えると、わたしのほうがずっと若くたって話は別だ。子供っぽくてもっさりした、クリームべたべたの崩れかけショートケーキみたいなわたしと、しょうしゃでおしゃれな色できれいに整ったきらきらのマカロンみたいなおねーさん、どっちが魅力的か考えたら答えはあきらかでぎったんばったんごろごろ
わたしなんか恋愛対象になりえないでしょう、どーせ。
同い年にだって華やかできれいでかわいい子はいくらでもいるしねえ、どーせ。
PR
いつも頭のどっかにいて夜になるととりわけ強く思い出す。髪型変えたら見てもらいたいし、どんな女の人が好きなのか、わたしと架空のその人はどのへんが違うのか考える。
ある人のことが気になって気になってしかたなくて、その人のことばっかり考えて胸をいっぱいにしてたら、それはもう恋です。
ざっくりした判定ではあったけれどなかなか気に入ったのでそういうことにする。それからはもう、どうしようもないくらい恋だった。ものすごく恋だった。とてつもなく恋だった。と、思う。
だから運命の人診断で包容力のある年上、とか出てきちゃうとますます期待した。
先生、もう何日め?あなたに会えない日なんてこりごりだ。メールもできないとなるとあなたに接触する手段がない。ほんとにない。用もないのに学校に行って職員室や国語科準備室をのぞく。勇気をだして入室してみたけれどいない。なぁにそれ。落胆して引き返す。ばったり、を期待しながら校門までだらだら歩いたけれどそんなドラマチック展開すら先生はみとめてくれない。つまんない。いつ行ったら会える?用もないのにそんなしょっちゅう行くわけにもいかないじゃない、準備室なんて。せめてメールしたい、できれば電話したい。3分でいいから見たい会いたい話したい。帰宅して、そんなことをうつうつと思いながら気分転換にクッキングにいそしむ。30分かかった。できあがったツナマヨグラタンパンをつっつきながら、家に呼んでこいつを食べさせてあげる相手がいないなんて、とまた嘆く。
移動教室の途中で先生を見た。おしゃれな上級生たちに囲まれて笑顔だ。わたしは生物の教科書と実験ノートをぎゅっと抱え、うつむきながら近づいていく。大股でずかずか進む歩き方はかわいくないけどしょうがないじゃない。髪が巻きあがってうしろになびく、それをなおすそぶりでちらっとようすを伺う。先生こっちを見た。半笑いのまま。すぐに目をそらす。くるくるの巻き髪ロングの上級生が先生の胸元をつかんで、「体育さぼりたーい」なんて揺するのが見える。心のなかで罵倒したくなるのすらこらえて、わたしは黙って通りすぎた。
今日の実験は消化酵素について。わたしはふだんやりたがらないアルコールランプをすすんで担当し、マッチを何本か擦って四本めでようやく点火に成功した。無機質な器具にかこまれてゆらゆら揺れる橙の火。黒い机に写りこんでいるのを爪でひっかく。透明マニキュアがはげかけていて、帰宅したら一刻もはやく塗り直そうとこころに決めた。こんなんじゃ先生に触れられないし、今日はまっすぐ帰りたかった。
アルコールランプの火を消してしまうとあとはなんにも考えたくなくて、消化酵素とかちゃんと働いてくれてるならそれで良いし、わたしは机に左頬をつけてぼーっと考え事をした。巻き髪ロングのかわいくて有名な三年生、神城先輩はサッカー部のエースと別れたばっかりだったなと思い出す。わたしは手帳を開き、三月まであと何ヵ月あるか確認した。
何度繰り返しても、わからないことのほうが、よほど多い。
空が白い日の表現を、わたしはいつも持ち得なくて、逡巡する。降り続く雨は秋には肌寒い。すこしだけ短くしたスカートからさらす足はじかに濡れてすごく冷える。母の買ってきたひしゃげた傘をかたむけて、後輩に当たる中学生たちの集団とすれちがう。線路沿いにさいた毒々しいオシロイバナは夏からずっと盛りだ。ビニール傘をさしたよれよれのジャケット姿のおじさんが向かいから歩いてきて、すれちがう瞬間、その人の手の中でライターがシュボッと爆ぜて、たばこのにおいがたなびいて消える。そんなかんじで短い距離をふらふら下校する。雨のしめった空気が、民家の垣根から飛び出した金木犀の香りをいっそう強くする。水煙にくるまれるみたいにして、ふわふわと、独特の甘い甘いせつないにおいが、ただよってきて、すごく強く香る。わたしはその瞬間幸福になる。
彼はなにを考えていたのだろう。この香りを嗅ぐとき、彼の胸を締め付けたものは、いったいなんだったのだろう。彼はどんなことを思いながら、この花のことを歌ったのだろう。
あと三ヶ月もすれば丸二年になるが、いなくなった彼の行方は杳として知れない。
それでも待っている人がいる。人目をはばからずさびしいと、好きだと泣けるあの子がいなくては、きっとうまくバランスがとれない。あの子がわすれるような日がくるなら、きっと世界中のあらゆるバランスが、バベルの塔みたいに崩れていくだろう。彼はまるで神なのだ。わたしたちにとって時々神になるのだ。卑怯だ。あの子には神を請うていつまでもいつまでも泣いていてもらいたいと、わたしをおいていかないで、わたしの気持ちがはなれていくときが来るならばそのときまで、ずっと立ち止ってしゃがみこんでいてもらいたいと、そう望むから、わたしのほうが卑怯なんだけど。
今日も幾人もがあの甘い香りを嗅いで胸を切なくさせるのだ。無駄に胸をさわがせたあらゆる人々が、それぞれの戦闘服に身を包んで、戦場へ向かったり、帰路に着いたり、しているのだ。
カテゴリー
ブログ内検索
BlogMusic
