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こんなくだらないことで泣きたくなんかなかった。もっとうつくしいことに泣いていたかった。せつなくすれ違う恋とか、待つ人が来ない憂鬱とか。月が冴え渡るのにつけては露のように涙を落として、花が散っていくのにつけては絞れるほどに袖を濡らしたい。な。
はやく慰めにこい、こい。

くだらないなぁ。あと9ヶ月しか、ない。
むつかしいことだ。とても。
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たぶん、誰にでも、思い出してしまう人、というのがいる。それがいいことなのかどうかは、わたしにはよくわからない。
いつか、老いる。その声も、姿も、指も、思想も、すべて、すべて、老いて、枯れて、朽ちて……なくなってしまう。何もかもを、あとに遺して。過去の遺物を。決定的に、運命的に。

ねぇ教えてよどうしたら生きていけるの
本にまみれたまま四年間、そのまま生きていけやしないの
どぼっとため息の出る午前4時 三年め しのびよる季節
化けの皮 はがないで つかえないおんなだなんて知りたくない
わたし まだ 知りたくない
どうしたら生きていけるの わたし まだ 知りたくない

「でもね、ユカリ、あんたとは何かの縁があるんだと思う」
「縁?」
「そう。なんか、こう、見えない糸みたいなので」
繋がっちゃってる。きらきらした現実を生きているはずの桐原ユカリの、リップを塗ったかわいらしい唇からそんなトンデモ発言が飛び出したので、わたしは面食らった。
「なんで……?」
「わかんないよ。ていうか説明するの面倒」
それじゃあわたしにもわからないなぁ。と思ったところでふと、今、前から言いたかったことを言おう、と思い立った。
机に転がっていた2Bの鉛筆を拾い上げる。
「ねぇ、桐原ユカリ」
黒光りする実験机の上に、紫、という字を大きく書いた。上の「此」の部分と、下の「糸」の部分とにたっぷり間を空けて。
「紫、という字は、隠語で『此の糸』っていうんだよ」
「このいと?」
「うん。遊女の源氏名なんかに使われてた」
「遊女ー?」
へーえ、と桐原ユカリは若干どうでもよさそうに、でも感心したようなしぐさで、頷いた。
あっ、しまったかな、とわたしはちょっと焦った。自分の名前と遊女の源氏名とのつながりなど、知りたくなかったかもしれない。
昔、友だちが、自分の子供が女だったら「椿姫」と名づけるんだ、と嬉々として語るのを聞いて、「それは有名なオペラの高級娼婦の名前だよ」というようなことを思わず口走り、場の空気を凍りつかせたことがあった。あの空間でよくぞそんなことがのたまえたなぁと今も頭を抱えたくなる。
だけど、まぁ、桐原ユカリならいいかな。とちょっと思った。だって彼女はそんなことで傷ついたり不快になったりするような子には思えなかった。
桐原ユカリは突然、ぱっと顔をかがやかせて、
「遊女って、あれでしょ! 派手な着物着てメイクして、男とえろいことしてお金もらうお仕事」
艶美と憂愁に満ちた豪華絢爛たる遊女の世界にそんなえげつない表現をするな、と一瞬思ったが、わたしが遊女のなにがわかるというわけでもないので、黙った。
「嫌いじゃない。ねぇ、双海」
黒い机にテラテラと光る鉛筆のあとを指でなぞり、どこか嬉しそうにつぶやいたあと、桐原ユカリはわたしのほうを向いた。薄い唇を広げて歯並びのよい歯をのぞかせる。
「一月になったら、うちにおいで。うち、おばあちゃんが呉服屋だから、きれいな着物、いっぱいあるの。毎年ママが着付けてくれるから、初詣、いっしょに行こ」
「え! いいの?」
思わぬ誘いに目をしばたたかせると、桐原ユカリはうんと首を振る。なんだか、まるで、中のよい友だちみたいで、奇妙だった。だって実際は全くそんなことなかったから。





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